大企業が相次いで不祥事を起こす要因とは?

はじめに

今回のコラムは、すでに世間で大きなニュースになっている特性から、あえて企業の実名を挙げています。
決して、企業を名指しした誹謗中傷が目的ではなく、著者個人的にはここで紹介する企業に対してリスペクトの気持ちを抱いています。
また、コラムのタイトルは当サイトのコンセプトである車を高く売るノウハウとは関係ないように見えるかもしれません。

先に結論を伝えると、今回のコラムで伝えたいのは以下の2点です。

・成長を遂げる大企業は他社にはない強みを持ち、実力があるから成長を遂げてきた実績を持っている
・実績を残した大手でも、拠点が多い大企業ならではのシガラミがあり、安定した高品質サービスを提供できないこともある

さらに簡単にまとめると、大手の看板だけを信頼して契約内容の詳細確認や他社との比較をせずに、車の売却先を決めてはいけないことを、コラムを通じて理解してもらう目的で、注目されている大手の不祥事を取り上げました。

日産のゴーン元会長が起こした改革と問題点

日産の起こした不祥事について説明

2018年11月に日産のカルロス・ゴーン会長とグレッグ・ケリー代表取締役が、実際の報酬額よりも少なく見せかけた額を有価証券報告書に記載した金融商品取引法違反容疑で逮捕されました。
ゴーン元会長は、1999年に財政危機だった日産がフランスの自動車メーカー「ルノー」と資本提携を結んだことをキッカケに、同社の最高執行責任者(COO)に就任します。
その後は、社長兼CEOに就任し2016年より会長に就いていました。
世界屈指のやり手とも称され、財政難だった日産をV字回復させると、2017年の世界新車販売台数は日産・ルノーがトヨタを上回る世界2位にまで上り詰めました。
世界一を視野に入れた矢先の逮捕劇は世界中に大きな衝撃を与えています。

私は車業界に強い繋がりを持っているコネクションから、日産の開発に携わる人物より内情を聞くことができました。
あくまでも、スタッフ1名から聞いた内容に私の見解を加えた話であることを理解して、続きをご覧になってください。

日産はゴーン体制になってから、経営を抜本的に見直し、社内で高い競争意識を持たせるようになりました。
具体的には拠点ごとで競争をさせて、日産全体の売上や利益とは別に他の拠点に比べた成果を競わせるように変えました。

社員や下請業者の意識改革によって日産はV字回復を遂げ、新型キャラバン、ノートe-Power、リーフなど多くのヒット車種を世に送り出し、2017年には過去最高の販売台数を記録します。
その反面、社内の競争意識が高くなりすぎたことで、拠点や部署の違うスタッフ同士が管理職を含めて仲が悪くなってしまいました。

出世や高評価を得るためには、同じ日産の仲間を蹴落とすことを求められるようになり、お互いに足元をすくおうとする行為が増えていきます。
報酬を偽ったゴーン元会長の問題や2017年に発覚した燃費改ざん問題は、内部告発によって明らかになった経緯があります。
これはゴーン元会長が作った体制による副作用だったと言えるでしょう。

もちろん、受け取った報酬額の偽造は悪質な犯罪で許されるものではありません。
それを踏まえた上でも、内部告発が起こりやすい環境を作った張本人が、重い罪に問われることになったのは皮肉な結末に感じます。

間違いなく日産の経営に復帰することはもうないですが、ゴール元会長が日産に与えた功績は非常に大きく、彼ではければ今の日産の躍進はなかったでしょう。
財政難に陥っていた大企業がV字回復して世界のトップメーカーまで成長するのは、攻めた経営改革が必要になり、現場で働くスタッフは外部からは見えない不満を抱えていることがあります。

一度上げたハードルがアダとなったレオパレス

不動産投資アパートとして注目されているレオパレスの物件イメージ

2019年に不祥事で注目を集めた企業といえば、投資用アパートの開発を行うレオパレス21です。
車とは関係のない不動産業者ですが、私が歩合給を含めてやりがいのある営業職に転職を考えていた当時は、レオパレスも転職先の候補になっていました。
近年は、強引な営業や一部地域でアパートを作りすぎて自社競合による空室率の増加が問題視されていましたが、私がレオパレスに興味を持った10年以上前は、大手ビジネス誌「週刊ダイヤモンド」にて、この先10年で成長しそうな企業ランキングで1位に輝いていました。

今は多くの不動産業者が扱う30年一括借り上げのシステムを作り出したレオパレスは、ほかにもマンスリーレオパレスなど革新的なサービスを多数生み出して、賃貸不動産業界の貸し手と借り手の双方に良い影響を与えました。

しかし、地主を対象にした全国の営業活動が一巡したことに加え、同等のサービスを提供する競合他社が増えたことで売上が減少していきます。
その後は2006年に手数料を売上に計上せず過少計上する不正と、2019年に発覚した界壁施工不備物件を中心にした施工不良物件の大量発覚による不祥事を起こします。
あくまでも私の個人的な見解ですが、レオパレスは国内屈指の不動産会社に成長した全盛期の利益を基準に、部署単位で高いノルマを課したことで、普通にやっても利益が出るような受注状況でも、より多くの利益を出すために不正をしてしまったのでしょう。

車業界の大手チェーンやディーラーにも共通点が

大手の不祥事と車業界経営の共通点とは

日産のように社内の競争意識を高めた足元のすくいあいや、レオパレスのように過去の全盛期を基準にしたノルマの設定と高い利益率の追求は、チェーン展開する大手車業者にも共通点があると見ています。
もちろん、経営者が正しく舵を取っている優良業者も多数存在しますが、店長クラスなど現場単位を含めると、一部でお客の利益や現場で働く社員の働きやすさよりも、会社や経営者の利益を追求した運営は間違いなく存在します。

誤解のないように改めて伝えますが、日産の作る車の品質は非常に高く、レオパレスも一部で不正や不適切運営の被害を受けた顧客がいるものの、成長を遂げることができたのは、実力を伴っていたからです。
良いサービスや商品を提供するには、時には現場への厳しい指導や管理を求められます。
車買取業者に置き換えると、厳しい店長だからこそ優秀な成績を残したり、誠心誠意の勉強をして他社よりも高い査定価格を提示できることもあります。
その反面、成長を遂げる大手チェーンは、一部で社内の都合によって顧客に損失を与える事例も存在しています。

大手は小規模業者には真似できない、自社販売ネットワークを活かした直売や、オークション会場で車を運ぶ陸送費用の価格交渉などで高価買取を可能にするポテンシャルを持っています。
しかし、規模が大きい大手になるほど、売却相談するタイミングや拠点によって、サービス品質の波が大きくなります。
全ての大手業者に言えることではありませんが、良いサービスには副作用とも言える闇が存在するケースもあるので、評判の良い大手であっても全面的な信頼をして車の売却手続きを進めてはいけません。