自動ブレーキ・自動運転機能と査定評価の関係

自動運転機能のイメージ

自動車業界はここ数年で、自動ブレーキや自動運転機能などの先進装備が革新的な進化を遂げました。
2020年度にはホンダのレジェンドが世界で初めて自動運転レベル3の市販化を発売予定。軽自動車やコンパクトカーでも自動ブレーキを標準装備にする車種が増えています。
サポカー補助金、自動車保険の自動ブレーキ割引など経済的なメリットが生じていることが追い風になり、自動ブレーキや自動運転は当たり前の機能へと変化しました。
また、2020年6月10日に公布された「高齢者対策の充実・強化を図るための規定の整備」では、2年以内に安全運転サポート車(サポカー)限定免許を創設する旨をアナウンスされています。

時代が変化している背景もあり、これから車を買う方や代替を検討している方は、自動ブレーキ・自動運転機能の装備を付けるか迷っている方が多いのではないでしょうか?
装備が充実するほど車両価格は高価になりやすいですが、ここで気になるのが将来車を売る時の査定評価です。
ネット上では「将来的に自動ブレーキがない車は安くなる」といった情報が散見されますが、当サイト独自の見解としてリセールバリューへの影響は軽微なものになると予想しています。

過去に登場した安全装備

これまで自動車保険料の割引制度対象になった安全装備は以下の種類があります。

エアバッグ
ABS
横滑り防止装置

いずれの割引制度も、これから新規契約・更新する自動車保険では原則として適用されません。
全て標準装備が当たり前の安全装置へ普及していますが、普及する過程において安全装備の有無で中古車相場が大きく変わることはありませんでした。
過去の事例と単純に比較するだけであれば、自動ブレーキが付いていない車のリセールバリューが極端に悪くなる可能性は低いです。

自動車保険の自動ブレーキ割引

損害保険料算出機構の発表した参考純率では、自動ブレーキのある場合は自動車保険料が約9%割引されます。
ただし、自動ブレーキ割引が適用されるのは原則として初度登録から3年経過するまでです。
新車購入後3年のランニングコストは優遇されますが、割引適用期間が限定されているため中古車価格への影響は微々たるものになります。
なお、自動ブレーキ割引の有無や割引率、適用条件の詳細は保険会社によって異なります。
自動ブレーキ割引が適用される車を購入した際は、保険会社を見直してみるとよいでしょう。

自動ブレーキの安全性

エアバッグ、ABS、横滑り防止装置に比べて、自動ブレーキは事故抑止力が高いです。
使用するレーダーの種類によって精度は変わりますが、脇見運転などを起因とした初歩的な追突事故(オカマ)リスクは大幅に軽減されるでしょう。
事故リスクを軽減させる効果から、中古車を購入する方は自動ブレーキ有りの車種を狙う需要があります。
しかし、自動ブレーキで使用するレーダーやコンピューター制御の内容が年々進化を遂げているため、中古車購入をする方は自動ブレーキに強いこだわりをもっていません。
こだわりが強い方は新車・新古車を買いますので、3年もしくは5年以上経過すると過去のABSや横滑り防止装置が普及して間もない頃と同等に、査定の加点対象から外れる可能性が高いです。

自動運転は全車標準にならない?

自動運転機能は今後確実に進化と普及を遂げていきますが、全車標準装備にはならないでしょう。
中古車市場での評価は、大排気量の車を中心に搭載されているクルーズコントロール機能の延長程度になる可能性が高いです。

自動運転レベル

自動運転レベルは以下の5段階に区分されています。

レベル1

車が進行する際に縦方向か横方向のいずれかの制御において、監視・対応をシステム側が行う
主にアダクティブクルーズコントロール機能(レーザークルーズ)搭載車が自動運転レベル1に区分

レベル2

車が進行する際に縦方向と横方向の両方の制御において、監視・対応をシステム側が行う
主に高速道路における車線維持や車線変更機能付きのクルーズコントロール
あくまでも運転支援機能に分類され、運転者は常に手動運転へ切り替えて危険を回避する義務と事故発生時の責任を負う
ホンダセンシング、日産プロパイロットなど2020年現在、各メーカーが自動運転レベル2に該当する車種を多数販売中

レベル3

条件付きで自動運転に任せたハンズフリー運転が可能
ホンダのレジェンドが2020年度中に世界で初めて自動運転レベル3を市販化する予定
主に高速道路に限定した完全自動化
任意の切り替えで手動運転も可能

レベル4

限定エリア内で運転手不要の運転が可能
特定エリア内で走行する送迎車や巡回バスなどで使われる見込み

レベル5

どこでも自動走行が可能
実現して100%普及すれば理論上、運転免許が不要になる
2020年現在、市販化には相当の時間がかかる見込み

2021年度以降は各メーカーから自動運転レベル3に対応した車種が続々と登場する可能性が高いですが、そこから先のレベル4・レベル5が乗用車で普及するには時間がかかるでしょう。
自動運転レベル3で足止めをした場合、自動運転機能がない車が不便で時代遅れだと扱われる可能性は低いです。

自動運転レベル2の評判

前方車両と一定の車間距離を保ち、なおかつ車線維持や自動で車線変更を行ってくれる自動運転レベル2は既に高い普及率を誇っています。
自動運転レベル2搭載車両のオーナーからは「運転が楽」、「怖い思いをした経験がない」など高い評価を得ていますが、一部で「自動運転だとかったるい」、「誤作動を起こすことがある」、「音声アナウンスがうるさい」など不満の声を聞かれます。

高速道路を走行中、前方に速度の遅い大型トラックが走っていた場合、人の手による運転であれば事前に後続車両が少ないタイミングで車線変更をして無理なく追い越しをします。
制限速度100kmの所でも、追い越しのタイミングで一時的に時速100kmを僅かに超える運転をする方が多いのではないでしょうか?

自動運転の場合、前方に遅い車両が走っていても、まずは一定の車間距離に近づいて一定時間追従してから車線変更を行います。
自動運転中は法定速度を1kmも超えることはなく、後続車両が完全にいないなど相応の安全マージンがないと車線変更をしません。
事故を起こさない安全性は自動運転が優れていますが、状況に応じてロスの少ない運転をする面では人による手動運転に軍配が上がります。

悪い口コミで見られる誤作動はセンサーが過剰に反応してしまうことで、追突の危険性がない場面で減速したり警報を鳴らしたりする現象です。
各種センサーやレーダーの精度は年々向上していますが、事故を起こさないことを最優先にしているため、必要ないと思うシーンで安全装置が作動するリスクを完全に無くすことは難しいでしょう。
また、自動運転に頼った場合、車線変更をする際などに音声でその都度アナウンスされるため、音楽や会話を楽しむドライブでは不便といった声が聞かれます。

自動運転レベル2は概ね好評価を得ていますが、フル活用していないオーナーが多数います。
今後は自動運転レベル3が主流に変わっていく見込みですが、現在の自動運転レベル2や自動運転機能非搭載車の市場価値は大きく下がらない可能性が高いです。

必要性を感じるかが重要

自動運転機能のイメージ2

将来売る時のリセールバリューで考えた場合、自動ブレーキや自動運転機能が付いた車種の購入にこだわる必要はありません。
しかし、自動ブレーキは追突事故リスクを大幅に軽減し、自動運転機能では快適性を高められることは明白です。
新車であればプラス数万円の価格差で自動ブレーキ搭載車を変えますので、軽減できるリスクを考慮すれば値段に見合う価値があります。
自動運転機能は安全性に加えて長時間運転の疲労を軽減させる効果があるため、用途や運転スタイルによっては価格以上の価値を感じられるでしょう。

これから新しく車を買う際は、自身が必要性を感じられるかを整理してみてください。
自動ブレーキのない車を購入した場合、万一事故を起こした際に自動ブレーキ付きの車を買っておけばよかったと後悔します。
リセールバリューの差は出なくても、過去に普及したABS・エアバッグ・横滑り防止装置やクルーズコントロールに比べて、自動ブレーキと自動運転機能は車社会を変える高い革新性を持っています。
新車や新古車を購入する方は、先進装備の充実した車種を前向きに検討してみてください。
必要性を感じない方は、将来のリセールバリューだけを重視して無理に先進装備を付ける必要はありません。